野球ルール

2018年6月5日

日本における野球の公式ルールは「公認野球規則」に定められています。アマチュア野球には、さらに「アマチュア野球内規」が適用され、また学童野球には、お子さんが所属する「少年野球連盟独自のルール」が適用されるのが一般的です。

「公認野球規則」は、ベースボールマガジン社より1,080円(税込み)で書籍化されており、「アマチュア野球内規」については、「一般社団法人 全日本野球協会」のホームページで確認することが出来ます。

ここでは、学童野球の審判をする上で最低限必要になるルールを「初級編」「中級編」「上級編」に分けて学習して行きましょう。

 

野球ルール初級編

ここでは、知っていそうで意外と本当の意味が理解されていない野球の初歩的なルールについて説明したいと思います。

 

ストライクゾーン

野球規則「定義74」によると

「打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間をいう。このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべきである。」

つまり、画像で説明すると

【 高校野球ーinfoより画像を引用 】

  つまり、上記ホームベース上の五角柱の空間にノーバウンドで投球が入ればストライクと言う事です。この五角柱に完全に投球が入らなくても、ギリギリかすってさえいればストライクになります。

この五角柱の高さは打者が通常打ちに行った姿勢であることがポイントです。構えた時の姿勢ではありません。良く見られるケースとして極端に低い姿勢で構えてストライクコースを狭く見せたり、高めの球を見送る時にしゃがんだりする場合においても、あくまでも通常打つときの姿勢で判断しなければなりません。

余談になりますが、2009年までのアマチュア野球内規では、低めのボールは全てベース上を通過しなければストライクとなりませんでした。しかし、この規則は廃止されており、ルール上では、山なりのボールが五角柱を通過し、ベースの上に落ちた場合でもストライクになります。この辺の解釈については、いろいろな意見がネット上でも出されておりますが、私が所属する野球連盟の審判講習会では「ベース上に落ちたボールはボール判定」と教えられました。不安であれば所属されている野球連盟に確認した方が良いと思います。

 

フェアボールとファウルボール

 

フェアゾーン(フェア地域)と、ファウルゾーン(ファウル地域)

フェアボールとファウルボールを理解するために重要なのがファウルラインです。ファウルラインとは、本塁から1塁、本塁から3塁を通って、それぞれ競技場のフェンスの下端まで引いた直線の事です。

このラインより内側のエリアがフェアゾーン(フェア地域)、外側のエリアがファウルゾーン(ファウル地域)です。

ここで覚えて頂きたいのは、ファウルライン上もフェアゾーンであり、またそれぞれの地域は上方の空間も含まれます。ですからファウルラインの上方の空間はフェアゾーンと言うことになります。

 

フェアボールとファウルボール

ファウルとフェアの判定ですが、簡単に言えば「フェアゾーンに打球が落ちればフェアボール」で、「ファウルゾーンに打球が落ちればファウルボール」です。

ただし、例外もたくさんありますので、それらについては具体例を見ながら説明して行きたいと思います。

まずは、ファウルボールについて

①打球が外野のファウルゾーンに落ちた場合は、ファウルボールです。

②打球が内野のファウルゾーンに落ちた場合は、ファウルボールです。

③ゴロの打球が1塁または3塁より手前でファウルゾーンに出た(プレイヤーに触れた、または止まった)場合はファウルボールです。

④内野にフライで上がった打球がワンバウンドして、1塁または3塁ベースより手前でファウ ルゾーンに出た場合は、ファウルボールです。

 

次にフェアボールについて

 

①フライの打球が外野のフェアゾーンに落ちた場合

②ゴロまたはフライの打球に、フェアゾーン内でプレーヤーが触れた場合

*プレーヤー以外にも審判に触れてもフェアボールとなります。

③一度ファウルゾーンに出た打球が内野のフェアゾーンに戻って来た場合

④内野でバウンドした打球をファウルラインの上空で野手が捕った(または触れた)場合

*ファウルラインの上空もフェアゾーンなので②と同じです。ちなみに野手が捕球した際の体や足の位置は、判定に全く関係ありません。

 

さて、ここからは判断に迷うケースですが、試合ではたまに起こる事なので、しっかりと覚えておきましょう。

 

 1塁・2塁・3塁ベースに触れた場合は、フェアボールです。

*本塁に当たっても、その時点ではフェアボールでもファウルボールでもなく、その後の打球の転がりで判断する事になります。また本塁上にボールが止まった場合は、当然フェアゾーンですのでフェアボールとなります。

 

1塁または3塁に触れている走者に打球が当たった場合は「走者が打球に触れた際のボールの位置」で判断します。

*当たった場所がファウルゾーンならファールボール、フェアゾーンならフェアボールとなります。ファウルゾーンで打球に当たった場合には、塁に触れていなくても、故意に当たったのでなければファールボールとなり、フェアゾーンで当たった場合には、フェアボールになり走者はインターフェア(守備妨害)でアウトとなります。

 

打球が投手板を直撃し、そのままファウル地域に入った場合はファウルボールです。

 

それでは最後に、内野フェアゾーンの地面に一度触れた打球が、1塁または3塁の上方を通過した場合の判定です。

野球規則「定義25」フェアボール(b)によると

(b)1塁または3塁を、バウンドしながら外野の方へ越えていく場合に、フェア地域内に触れながら通過するか、またはその上方空間を通過したもの。

また、野球規則「定義32」ファウルボール(b)によると

(b)1塁または3塁を、バウンドしながら外野の方へ越えていく場合に、ファウル地域に触れながら通過するか、あるいはファウル地域上の空間を通過したもの。

と言うことですので、1塁または3塁ベースの上空をかすってでも通過すればフェアボールと言う事です。

つまり、内野フェアゾーンの地面に一度触れた打球が、1塁上空を通過した②から④までと⑤はフェアボールで、①はファウルボールと言うことになります。

 

フォースプレイ

­ 打者が投球を打つなどして、打者がランナー(これを「打者走者」と言います。)になる場合、1塁上にいるランナーは、その塁の占有権(その塁に触れている限り、野手に触球されてもアウトにならないと言う権利)を失う事になり、前から来るランナーの為に塁を譲らなければなりません。このような状態をフォースの状態と言います。

*当然ですが1塁2塁にランナーがいる場合には、それぞれのランナーがフォースの状態と言う事になります。

  フォース状態のランナーをアウトにする為には、そのランナーに直接タッチをしなくても、次の塁へ到達する前に、ボールを持って次の塁に触れればアウトを取る事が出来ます。

このようなプレーをフォースプレイと呼び、これによって取られたアウトをフォースアウトと言います。プロ野球でよく見るダブルプレーは、このルールを適用しているのです。

 

ここでフォースプレイにおいて注意が必要な

1アウトランナー1塁でファーストゴロを打った打者走者を1塁で最初にアウトにした場合
について説明します。

ここで重要なのは、「打者走者がアウトになると、フォースの状態ではなくなる」つまり、1塁上のランナーは、次の塁に行く必要が無くなるのです。

つまり、1塁ランナーが2塁に向っているのであれば、2塁に到達する前にそのランナーにボールを持って直接タッチしなければアウトになりません。

学童野球では、まだルールを完全に覚えていない選手も多くおり、2塁を踏んでアウトと勘違いする子も沢山いますので注意が必要です。

ちなみに、上記の場合において2塁ランナーが2塁に進まずに、1塁に戻る事も出来るのです。

 

振り逃げ

打者が三振をした時に、捕手が捕り損ねた場合、打者走者として1塁を目指す事が出来ます。これが振り逃げです。

【 日刊スポーツより画像を引用 】

 

実はこの振り逃げも奥が深いので良く理解する必要があります。

野球規則 6・05(j)によると

打者はストライクを3回宣告されると三振になり、少なくとも捕手が捕球していればアウトになる。しかし、一塁に走者がいない、もしくは二死の状況で、第3ストライクにあたる投球を捕手が正規に捕球できなかった場合には、打者は一塁への進塁を試みることができる。このとき打者をアウトにするには、打者が一塁に到達する前に打者または一塁に触球しなければならない。

野球規則 6・09(j)によると

打者がアウトにならずに一塁に到達すると、走者として一塁を占有することができる。

 

つまり、振り逃げの出来る状況は

1塁にランナーがいない」または「ツーアウト」です。
この状況で「第3ストライクにあたる投球を捕手が正規に捕球できなかった場合」振り逃げが出来るのです。第3ストライク」とは、空振り三振だけで無く、見逃しの三振でも構いません「正規に捕球できなかった場合」とは「投球をノーバウンドで直接ミットでキャッチ出来なかった」事を言いますので、落球した場合でも投球がワンバウンドした場合でも振り逃げは出来ます。

この「振り逃げ」と言う名前は、公認野球規則には載っておらず、日本においての俗称となります。

ちなみに「2アウト満塁で振り逃げをした場合」、塁上の全てのランナーはフォースの状態にありますので、捕手がホームベースに触れればアウトになります。しかし、学童野球では、振り逃げをした場合、反射的に一塁に送球してしまう捕手も少なからずいます。その際、捕手が意識しないままにホームベースを踏んで送球していれば、その時点でアウトと言う事になります。

 

 

野球ルール中級編

ここでは、審判をする上で必ず覚えておきたい、少し難しい野球のルールについて解説していきます。

 

ボーク

ボークとは、投手の投球や塁への送球の際に、投手が行う反則行為の事です。ボークが発生した場合は、塁上のランナーは1個の安全進塁権(アウトにならずに先の塁に進める権利)が与えられます。

ボークの条件は塁上にランナーがいる事です。ちなみに同じ行為をランナーがいない時に行えば、反則投球となりボールカウントが1つ増えます

ここで重要なことは、ボークはランナーを守る為のルールと言う事です。つまりボークを取らないと攻撃側に不利益を与えてしまいます。

 

ボークの説明する前に、投手の投げ方を理解しましょう。

 

  • ワインドアップ(ノーワインドアップ)

ランナーがいない場面での投げ方で、投手板(ピッッチャープレートのこと)に垂直に両足を揃え、軸足(右投げなら右足、左投げなら左足)をプレートにかけ、自由な足(右投げなら左足、左投げなら右足)をプレートよりも後ろに持っていき反動をつけて投げる方法です。動作が大きく、ランナーがいる場面では、盗塁されやすいので使いません。

出典:ameblo

 

  • セットポジション

ランナーがいる場面で、ファームをコンパクトにし、盗塁を防ぐ投げ方です。最近では、ランナーがいない場面でも、使う投手が増えています。軸足と自由な足をプレートに対して並行に置き、そのまま投げる方法です。

出典:instagram

 

それではボークについて詳しく解説して行きます。

公認野球規則6.02(a)では、次の13のケースをボークとしていますので、一つ一つ解説して行きます。

 

①投手板に触れている投手が、投球に関連する動作を起こしながら、投球を中止した場合

ランナーがいる場合は、セットポジションで投げます。まずは軸足を投手板に触れ、ボールを両手で身体の前方に保持し、完全に静止した状態(セットポジション)で、投球または牽制球を投げます。セットポジション後は投球または送球をする以外、首から上以外動かしてはいけません。首から下を動かした場合は「投球動作」とみなされ、そのまま投げなければボークとなります。

【ボークになる例】
 ・投球動作を開始したが途中で中断した。
 ・完全静止後にグローブを動かした。
 ・ランナーを見る為に、首から下側(肩)を動かした。
 ・完全静止後にグローブから、ボールを握っている手を離した。
 ・完全静止後に、体がピクッと動いてしまった。
このような場合はボークとなります。

では、投げなおしたい場合は、どうすれば良いのでしょうか?それは簡単です。投手板に触れている軸足を投手板の後方(触れない位置)に外せば良いのです。

 

②投手板に触れている投手が、一塁または3塁に送球するまねだけして、実際に送球しなかった場合

以前は右投げピッチャーが3塁に対して投げるまね(「偽投」と言います)をする事が認められていましたが、いまは禁止されています。ちなみに2塁への牽制球は真後ろに投げるので、投手板に触れた状態で偽投してもボークにはなりません。

 

③投手板に触れている投手が、塁に送球する前に、足を直接その塁の方向に踏み出さなかった場合

牽制球を投げる場合、必ず自由な足(軸足でない足)を投げる塁の方向にまっすぐ踏み出す必要があります。牽制に慣れていないピッチャーの場合、キャッチャー寄りに足が向いてしますうケースがあるので注意しましょう。

 

④投手板に触れている投手が、走者のいない塁へ送球したり、送球するまねをした場合

もし、1塁ランナーが投球前に2塁にスタートをした場合、2塁に牽制球を投げてもボークにはなりません。プレーに関係のある塁への牽制は許されています。

 

⑤投手が反則投球をした場合

投球動作を途中で止めた場合や、投球動作中にボールを落としてしまった場合がこれに該当します。

 

⑥投手が打者に正対しないうちに投球した場合

打者が十分に打つ体制が出来ていない状態で投球(これを「クイックピッチ」と言います)を行えば、ボークとなります。

 

⑦投手が投手板に触れないで、投球に関連する動作をした場合

ピッチャーが投手板に触れずに投球をした場合、ボークとなります。また投手板をまたいでストレッチをしたり、腕を振ったりした場合もボークとなります。つまり投手板の周りで投球と勘違いするようなややこしい動作をした場合はボークとなります。

 

⑧投手が不必要に試合を遅延させた場合

意味もなく、何度も投手板を外したり、リードが小さいにも関わらず牽制球を何回も投げたりした場合にはボークとなります。いわゆる時間稼ぎですね。

 

⑨投手がボールを持たないで、投手板に立つか、これをまたいで立つか、あるいは投手板を離れていて投球するまねをした場合

昔はプロ野球でも良く見かけた「隠し玉」対策ですね。ボールをこっそりと野手に渡してマウンドに戻り、投げるそぶりをすればボークとなります。

 

⑩投手が正規の投球姿勢をとった後、実際に投球するか、塁に送球する場合を除いて、ボールから一方の手を離した場合

投球姿勢に入った後、汗を拭いたり・虫を追い払おうと両手を離してしまうとボークになってしまいます。そのような場合は、軸足を投手板の後ろに一度外してから両手を離せばボークにはなりません。

 

⑪投手板に触れている投手が、故意であろうと偶然であろうと、ボールを落とした場合

握力の弱い学童野球では、後半に握力が無くなりポロっと落としてしまう事もありますよね。

 

⑫故意四球が企図されたときに、投手がキャッチャーズボックスの外にいる捕手に投球した場合

敬遠をする場合、投手が投げるまでは、捕手はキャッチャーズボックス内に留まらなければなりません。

 

⑬投手がセットポジションから投球するに際して、完全に静止しないで投球した場合

アマチュア野球では、走者がいるかいないかに関わらず、完全静止が必要です。しかし、プロ野球のルールでは「走者が塁にいない場合、セットポジションをとった投手は、必ずしも完全静止をする必要はない。」となっています。

 

このように、野球のルールにおいては、プロとアマチュアで若干の違いがあります。学童野球の選手はプロ野球中継を見てルールを覚える人も多いかと思いますので、この辺をしっかりと教えなければいけないと思います。ちなみにプロ野球で良く見るホームラン後のコーチャーとのタッチですが、学童野球ではアウトになりますのでご注意下さい。

以上がボークの説明となります。自信を持ってボークの判定が出せるようにしっかりと覚えましょう。

 

Posted by よっち